​【名誉権侵害と名誉感情侵害の差異】​

ネット上の誹謗中傷事案が民事事件として扱われる場合、主として名誉権侵害や名誉感情侵害の有無が問題となります。​両者は、刑事事件における名誉毀損罪・侮辱罪の区別と混同しがちですので、扱いに注意が必要です。

​■名誉権侵害の判断基準

一般読者の普通の注意と読み方を基準として、社会的評価を低下させるか否か、により判断されます(具体的事実の摘示の有無は問いません)。

<参考となる判例>

最高裁昭和31年7月20日判決は、「名誉を毀損するとは、人の社会的評価を傷つけることに外ならない。それ故、所論新聞記事がたとえ精読すれば別個の意味に解されないことはないとしても、いやしくも一般読者の普通の注意と読み方を基準として解釈した意味内容に従う場合、その記事が事実に反し名誉を毀損するものと認められる以上、これをもつて名誉毀損の記事と目すべきことは当然である」としています。

​■名誉感情侵害の判断基準

社会通念上許される限度を超える侮辱行為であるか否か、により判断されます。

<参考となる判例>

最高裁平成22年4月13日判決は、発信者情報開示請求事件にて、「本件書き込み中、被上告人を侮辱する文言は上記の…という表現の一語のみであり、特段の根拠を示すこともなく、本件書き込みをした者の意見ないし感想としてこれが述べられていることも考慮すれば、本件書き込みの文言それ自体から、これが社会通念上許される限度を超える侮辱行為であることが一見明白であるということはでき(ない)」としています。

上記のとおり、両者は判断基準を全く異にするため、二者択一の関係にはなく、名誉権侵害と名誉感情侵害は両立し得ます(また、過失の場合も成立しえます)。

​もっとも、損害賠償責任における損害額評価は、名誉権侵害の方が高くなる傾向がありますので、まずは名誉権侵害の有無・程度から検討すべきでしょう。